Earth Celebration-軌跡と記憶-

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アース・セレブレーション(EC)の誕生を中心になって牽引した、鼓童の初代代表である故河内敏夫(愛称ハンチョウ)は、旅の好きな人だった。そして、自分たちが帰ることのできる、港をイメージして、鼓童村構想を練っていた。その思考の中で、ECは発想された。 「鼓童が世界を旅する中で、出会った人たちを招き、佐渡の人たちに紹介したい。鼓童のホームグラウンド佐渡を、国内外の人々に紹介したい。」そこには、島外に出かけるだけであった、それまでの活動を佐渡に循環させる夢があった。 一方、これまでのECの足跡を振り返った時、その姿は一つではなく、形を変えながら、今に至っている。そして、「自分たちの祭り」が生まれているという実感が、現在まで続けられている原動力になっていると思う。特に私たちの活動が多岐にわたっている今日にあっては、年に一度、総出で一つのものを創り上げる、貴重な時間になっている。そして、そこに集い・参画するたくさんの方々があり、地元佐渡の人たちの協力があってこそ、継続できていることを忘れてはならない。 アーカイブのコメントは、ECと共に年を重ねてきた、私的視点でそれぞれの年の印象を綴ってみた。

菅野敦司

公益財団法人鼓童文化財団 専務理事 1995年〜2022年 アース・セレブレーション総進行

1988

1988

8/14(日)8/21(日)

ゲスト : 黒田征太郎、中上健次、新井英一、ボウ・ガメラン・アンサンブル(イギリス)、中国鼓楽芸術団(中国)、エルビン・ジョーンズ(アメリカ)、セシル・マクビー(アメリカ)、山下洋輔、川崎燎、ドラマーズ・オブ・ブルンジ(ブルンジ共和国)、網野善彦、中沢新一、川田順造

鼓童村での「開村記念コンサート」で幕を明けた、初めてのECは8日間の長丁場。奇跡的に1日も雨が降らず、好天に恵まれた。頭に太鼓を乗せて城山公園の森の中から登場したドラマーズ・オブ・ブルンジは、翌年初演となる「族(レナード衛藤作曲)」の誕生にもつながる衝撃を与えた。また、「祝祭 TATAKU(エルビン・ジョーンズ、ブルンジ、山下洋輔、鼓童)」での即興演奏の体験は、その後の鼓童の表現に大きな影響を与えた。そして、対談:黒田征太郎・中上健次、講演:網野善彦・中沢新一・川田順造という豪華な顔ぶれの識者が揃った。

1989

1989

8/23(水)8/26(土)

ゲスト : サムルノリ(韓国)、ハムザ・エル=ディン(スーダン)、黒田征太郎、近藤等則 他

この年は4日間の開催。ナイジェリアからのゲストであるツインズ・セブン・セブンの出国が遅れ、本番に間に合わないないというアクシデントが発生。「サムルノリ(韓国)」が急遽追加公演として、和紙で衣装を作り巫女舞による日本初公開のプログラムを披露してくれた。サムルノリとの共演は、後に日本の和太鼓界でも定番になる、桶太鼓の両面打ちの奏法を生み出すきっかけとなった。また、初日の鼓童公演で初めての「族」の演奏の際に観客やスタッフも舞台にあげて一緒に叩いたことは思い出に残っている。この年から始まった「フリンジ」では、木崎神社を会場に岩手より金津流梁川獅子躍(岩手)、猿舞座(山口)、地元小木町の小獅子舞などが彩を添えた。台風が襲来し、最終日の城山コンサートは、初めて会場を町民体育館に変更する事態となった。

1990

1990

8/16(木)8/18(土)

ゲスト : ラブ・ジョイ&ピースアンサンブル(アメリカ)、日野皓正、プング・チョーラム(インド)、シーラム・バティヤ・カラケンドラ舞踊団(インド) 他

ジャズトランペットの日野皓正、アメリカのゴスペルグループ、ラブ・ジョイ・アンド・ピースアンサンブルとインドからのグループをゲストに迎えたこの年から、3日間の開催期間が定着した。全ての準備が整い初日を迎えるばかりになった夜からの雨は一晩中降り続き、翌日になってもやまず、コンサート会場を体育館に移動することになった。2日目からは天気が回復して城山公園での開催ができたが、一組しかない音響・照明機材を、短時間で坂道を運び、仕込み直すスタッフとメンバーの苦労は並大抵ではなかった。

1991

1991

8/20(火)8/22(木)

ゲスト : ミルトン・カルドーナ&エヤ・アランラ(アメリカ)、スアール・アグン(インドネシア)、アジャ・アディ(ガーナ) 他

後にECのお馴染みのメンバーになるインドネシア・バリ島のスアール・アグンとガーナのアジャ・アディに、キューバの宗教音楽「サンテリア」のグループを加えた色彩豊かなゲストを迎えての開催。台風が直撃するとの予報もあったが、バリ島からの祈祷師の祈りで奇跡的に進路がそれてくれた。そして今でも忘れられないのは、2日目の公演の第一部が雨だったのにもかかわらず、第二部でスアール・アグンが演奏を始めると上空を覆っていた雨雲が消えて雨が止み、星が顔を出したことであった。「地球の祝祭」という言葉が実感を持って感じられた瞬間だった。

1992

1992

8/20(木)8/22(土)

ゲスト : ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ・パーカッション・オーケストラ(セネガル)、梅津和時、アジャ・アディ&アジェリー・メンサー(ガーナ) 他

この年が鼓童メンバーとして最後の出演となったレナード衛藤(レオ)。彼が企画した鼓童「三人狂」(さんにんぐるい)アフリカツアーの現地で共演したドゥドゥ・ニジャエ・ローズ・パーカッション・オーケストラ(セネガル)、アジャ・アディ(ガーナ)をゲストに迎えた、レオ集大成の舞台。「鼓童が海外で出会ったアーティストを佐渡で紹介する」というECの目的が実現され、お互いの信頼と理解に基づく「精神的な融合」が具現化された共演となった。また、アジャ・アディと山海塾のダンサー・岩下徹によるワークショップにはのべ450人の参加者があり、体験型の企画が定着する起点となった。

1993

1993

8/19(木)8/21(土)

ゲスト : カンサダン(タイ)、レネゲイズ・スティールドラム・オーケストラ(トリニダード・トバゴ) 他

機関誌「鼓童」の特集タイトルは「一緒に濡れた夏」。「大雨洪水雷雨低音注意報が発令される中、過去最高の観客が集まり、どしゃぶりになった雨にも負けず、泥の中で踊ったり、雷鳴に叫び返すことによって、自然との共存の方法を見出しているようですらあった。(ジャパンタイムズ)」そのような悪天候を吹き飛ばすように、メインゲストのレネゲイズ・スチール・ドラム・オーケストラ(トリニダード・トバゴ)が奏でるメロディーはカリブ海の音と風を運んでくれた。まさに「雨のEC」の表現がぴったりな、思い出に残る年になった。

1994

1994

8/18(木)8/20(土)

ゲスト : コスタ・カリベ(ベネズエラ)、ソウル歌舞楽芸術団(韓国) 他

今となっては、なんと無茶なことができたのかと思う1ヶ月間の「テント劇場」。小木町内の空き地に250人収容のサーカステントを設営して、22日間(7/28-8/18)の連続公演。出演者には内海好江、永六輔、小室等などの著名人も。真夏の空調のないテントの中の暑さは半端なく、客席内に氷ブロックを設置したり、周りを囲む幕を開閉し外の風を取り込むなど工夫を凝らした。そのテント劇場の開催期間、ほとんど雨が降らなかったにも関わらず、その最終日の公演中、鼓童が城山公園でリハーサルを開始すると雷鳴が轟き、町内一斉停電で、テント内は真っ暗。それでも、懐中電灯の明かりの中、演奏を続けたアンサンブル・グルフィーオ(ベネズエラ)のリズムが今も忘れられない。

1995

1995

8/17(木)8/19(土)

ゲスト : ブルガリアン・ヴォイス「アンジェリテ」(ブルガリア)、ババトゥンデ・オラトゥンジ(ナイジェリア) 他

久々に真夏の暑い太陽が「祝祭の庭」に顔を出してくれた。この年の舞台の特徴は、城山公園の自然を取り込めるよう、天幕を透明にし(実は日差しを遮れず暑かった)、舞台の奥にある幕や照明、スピーカーを取り除き、後方に広がる緑の森を背景にしたこと。その空間にはアンジェリテ(ブルガリア)、ババトゥンデ・オラトゥンジ(ナイジェリア)の聖霊を呼ぶような声がこだました。初めて鼓童村の稽古場を使って、岩﨑鬼剣舞(岩手)のレクチャーを行い、沢山の人々が集う開かれた「村」の可能性を探る上での第一歩となった。

1996

1996

8/18(日)8/24(土)

ゲスト : ドーナル・ラニー(アイルランド)モイア・ブレナン(アイルランド)リアム・オ・メンリィ(アイルランド)シャロン・シャノン(アイルランド)、ナリグ・ケイシー(アイルランド)、仙波清彦、梅津和時、渡辺香津美、木津かおり、木下伸一、佐藤一憲、れいち、清水一登、岡部洋一、バカボン鈴木、鈴元健二、保坂美子、小林武文、アジャ・アディ(ガーナ) 他

開催期間を1週間とし、「見る」から「参加する」フェスティバルへというテーマのもと、前半の3日間は鼓童メンバー、スタッフが企画した合宿・連続型のワークショップを中心に据えた。そこには、年々観客が増え、ECが商品化されてきているのではないかとの声の中、メンバーと参加者が「演者と観客」という関係を越え、一つの体験をする中で生み出されたものを大切にしたいとの思いがあった。その発表の場となる「城山大集合」では、普段着のメンバーと参加者の皆さんが一緒に城山公園の芝生の上でくつろぎ、初期のECの風景を思い出させた。そして「祝祭の庭」に集まる人々が主人公となり、様々な形で祭りに参加することが、ECを継続させる原動力になるという確信を新たにさせた。 後半の期間には、あえて城山公園からおり、町民体育館を会場にオールスタンディングでお客様に踊っていただくコンサート「ダンスホール・ナイト」も開催した。

1997

1997

8/20(水)8/23(土)

ゲスト : ドーナル・ラニー・スペシャル(アイルランド)レネゲイズ・スティールドラム・オーケストラ(トリニダード・トバゴ)、山下洋輔、渡辺香津美、レナード衛藤、スティーヴ・エトウ、山木秀夫、スアール・アグン(インドネシア)、ドゥドゥ・ニジャエ・ローズ・パーカッション・オーケストラ(セネガル)、アジャ・アディ(ガーナ) 他

10回目の記念の開催となったこの年、これまでの出演者の中から、お客様からのリクエストが多く、自分たちも佐渡で再び共演したいゲストを可能な限りたくさんお招きしたいと考えた。その結果、城山コンサートには海外から5グループ、国内から1グループが出演し、のべ8,150人、最終日には2,800人という過去最高のお客様を迎えた。休憩時間に客席に自然発生的にできたウェーブの輝きが、今でも目に焼きついている。演出を担当した金子竜太郎は「今回でECはひとつの形として花が咲き切ったようです。そこに実った実から種を取ってるところです。これから大地に蒔きます。」というコメントを機関誌「鼓童」に残していた。

1998

1998

5/14(木)5/16(土)

ゲスト : レッド・ウィロー・ダンサーズ(アメリカ)、EPO、笹子重治、渡辺亮、渡辺香津美、マルコス・スザーノ(ブラジル)、真砂秀朗、遠藤晶美 他

初めて春の開催となったEC。城山公園の奥に、照明、音響、屋根もない舞台を作り、入口の広場をオープンスペースとして、チケットを持たずに入ってもらえる空間として開放した。ゲストにはレッド・ウィロー・ダンサーズというネイティブ・アメリカンのグループをお迎えした。アメリカ・ニューメキシコのタオスの空から「祝祭の庭」に舞い降りた、イーグルが羽を一枚残して飛び去っていった。そんなイメージが脳裏に焼きついている。ECのセレブレーションには「寿ぐ(祝福する)」という意味が込められている。大地から資源を収奪する時代は終わった。21世紀に私達が携えて行くべきは、大地を寿ぎ、ともに暮らす知恵ではないだろうか。春の祝祭を終えて、そんなことを思った。

1999

1999

8/19(木)8/21(土)

ゲスト : フーン・フール・トゥ(ロシア、トゥバ)

ECも10回目を越えて、新しい出会いの場を模索して、三つの初めての試みに取り組んだ。一つ目は、ECシアター。小木町内の三つの会場を舞台に、三日間で19のパフォーマンスを行った。お客さんも出演者もスタッフも、その境界を可能な限りぼやかして、みんなが同じ空間を共有できる場づくり。二つ目は、ECキッズ。木崎神社を会場に、お絵描き、火おこし、ジャグリングなどに、子ども達が挑戦。彼らは、未来にどんな思い出を持って育っていっただろうか。そして、三つ目は現在まで続く地元の「祭好社中」の皆さんによる小木おけさ輪踊り。城山コンサートには、ロシア・トゥヴァ共和国から喉歌のフン・フール・トゥを三日間迎えた。彼らの演奏に反応するかのように稲妻が光り、最終日には木の下で演奏する彼らに、午後の日差しが木漏れ日となって降り注ぎ、自然が私たちと遊んでくれていた。

2000

2000

8/17(木)8/19(土)

ゲスト : 渡辺香津美と「ザ・ドラムスコ」、渡辺香津美、ジャッキー・ミカエリ(フランス)、村上ポンタ秀一、菅沼孝三、神保彰、桜井哲夫、金徳洙サムルノリ 他

11年振り2度目の出演となったサムルノリ(韓国)のリーダー、キム・ドクスのコメント。「いろいろな職業がある中で、『たたく』もの同士として出会えたことは素晴らしいことですね。叩くことは人間が絶える時まで変わらない、根源的なことです。そして、人間が人間らしさを守れる何かは、この『たたく』というところにあるのです。鼓童には、我々と共にこのメッセージを世界中の人々に伝えて欲しいと思います。」 また、沖縄からのゲスト、古謝美佐子はこんな歌を残してくれた。 「肝ぬ音高さ 鼓童ぬひびき 忘る事ねさみ いちむいちまでん(魂の音が高鳴る 鼓童の響き 忘れることはないだろう いついつまでも)」

2001

2001

8/16(木)8/18(土)

ゲスト : ザキール・フセイン・タール・アンサンブル(インド) 他

アメリカで同時多発テロがあったこの年、ECを振り返る機関誌「鼓童」にこんなことを書いていた。「地球上の文化が一つの価値観で一色に塗りつぶされてしまう、そのつまらなさと理不尽さを二〇世紀の後半に気づく中から始まった『大地の祭り』。様々な文化を持つ人々が、お互いの違いを認めつつ、共に暮らすことの豊かさと楽しさ、そんな思いを込めて続けてきたのだが…。何かに抗する力よりも、寄せ合う力の普遍性を信じて、こんな時代にこそ、普段出逢うことのない人たちが、年に一度『祝祭の庭』に集い、ひとときを共に過ごすことの意味をあらためて思う。」

2002

2002

5/9(木)5/11(土)

ゲスト : ヴォゼス・ダ・ペルクサン(ブラジル、プエルトリコ) 他

サッカーW杯が夏に日韓で開催されたこの年、2度目の5月開催となった。お盆と重なり夏にはお招きできない、秋田の西馬音内盆踊り「風の盆」の皆さんと地元小木おけさ「さざ波会」の皆さんとのコラボレーション。鼓童の森の里山づくりと森の中での篠笛コンサート。お寺を会場にした鼓童メンバーによる特別フリンジ「ちょっとお参りがてら」。太鼓好きと鼓童メンバーが語らう「太鼓夜咄」などの新たな企画に取り組んだ。城山コンサートには、サッカー王国ブラジルから、アイアート・モレイラ率いるヴォゼス・ダ・ペルクサン(パーカッションの声)を迎えた。

2003

2003

8/21(木)8/23(土)

ゲスト : クリバリー・ファミリー(ブルキナファソ) 他

11種類のワークショプ、3つのセミナー・講演、3つの展示、5つの特別フリンジと、コンサート以外の企画も充実した年であった。城山コンサートには久しぶりのアフリカからのゲスト、クリバリー・ファミリー(ブルキナファソ)を迎えた。そのコンサートをお客さんに混じって芝生に座って観た、私の感想。「本部テントでは感じることのできないライブな音と演者の波動が観客を包んでいた。そして、舞台と客席を往き来する、『気』のエネルギーが、芸能の神様を呼び降ろし、1週間前には何もなかった城山公園を『祝祭の庭』に豹変させていった。その様子を、わずかな時間であったが客席で体感できたことが、私にとって今年のECのハイライトだった。」

2004

2004

8/19(木)8/21(土)

ゲスト : ファンファーレ・チォカリーア(ルーマニア) 他

1週間かけて準備してきた特設舞台を台風の直撃で開幕前夜に失い、気持ちの立て直しをはかり時間と格闘した日々。会場の復旧作業の合間に城山公園を降り、フリンジやフリーマーケットを覗くと、そこにはゆったりと流れる時間と、沢山の笑顔があった。そして実感したのは、私達が企画し、創っているコンサートやワークショップなどの催しは、「祝祭の庭」で繰り広げられる出来事のほんの一部に過ぎず、参加者一人一人の出会いの中から立ち上がってくるドラマが幾重にも層をなして、この祭り全体を形作っていることであった。

2005

2005

8/18(木)8/20(土)

ゲスト : カルロス・ヌニェス、柿沼康二 他

ゲストにはスペイン・ガリシアからガイタ(バグパイプ)奏者、カルロス・ヌニェス率いるグループ、書家の柿沼康二という異色の組み合わせ。城山コンサートのリハーサル、小木みなと公園での鼓童フリンジ、そして最終日の「祝祭」でのライブペインティングと、音に包まれた中で生まれた「書」の作品が舞台を飾っていった。そして、この年は「小木おけさ」と「サンバで遊ぼう」、2つのワークショップが10周年を迎えた。参加型のイベントとして始まったワークショップは、今ではECには欠かせない出会いと交流の場になっている。

2006

2006

8/17(木)8/19(土)

ゲスト : タマンゴ・アーバンタップ 他

この年の演出を担当し、ECが鼓童メンバーとして最後の舞台となった渡辺薫のコメント。「三日間のコンサートを通じて、僕たち二つのグループ(鼓童と、城山コンサートゲストのタマンゴ・アーバンタップ)がお互いに成長し始めたのを感じました。最終日の夜には、一人一人の個性がはっきりと浮き上がって来ると同時に、異なるグループや文化の境界線が曖昧になってきました。リズムそのものがグルーブを持ち始め、観客の皆さんがその波に乗ることができたのです。」舞台から客席に向かって長い張り出し舞台を設置し、ダンサーが観客に包まれ即興で踊るシーンが目に焼きついている。

2007

2007

8/16(木)8/18(土)

ゲスト : ザキール・フセイン、ディルシャード・カーン、琉球芸能団、山下洋輔、ジョヴァンニ・イダルゴ、タマンゴ、松田美緒 他

20回目のECを目の前にしてこんな思いを書いていた。 「ECの成長を眺めた時に、地元佐渡の皆さんと島外からの参加者の皆さんが注いでくれたエネルギーの大きさを改めて感じます。自分たちが企てていることは、ほんのきっかけづくりにすぎないのであって、それを大きく実らせて下さっているのは、そこに集う一人一人が創造しているというまぎれも無い事実です。このことに気づいて以来、力が抜け自然体でフェスティバルの運営に望むことができるようになりました。」 20回目の節目の年、ECや各地で共演してきたゲストを佐渡にお招きし、再び共演したいと考えた。ECの第1回目と10回目に出演いただき、3度目の出演となった山下洋輔は、鼓童やゲストとの完全即興演奏を繰り広げ、「第一回ECのブルンジとエルビン・ジョーンズ、ここで彼らが出会った時の風景こそがECを貫く精神であり、今に受け継がれています」とのコメントを残してくれた。

2008

2008

8/21(木)8/23(土)

ゲスト : オロドゥン 他

日本人が移民としてブラジルに渡って100年になるこの年、日本ブラジル交流年を記念して佐渡にオロドゥン(ブラジル)を招き、そして鼓童がオロドゥンの本拠地があるサルヴァドールを訪ねた。また、佐渡在住のブラジル人の皆さんには、ゲストの食事作りやポルトガル語のチラシ作り、プレイベントでのカポエラのワークショップなど、多くの力をいただいた。フリンジでは「獅子たちの祭り」をテーマに、金津流梁川獅子躍(岩手)、杉野浦小獅子舞(佐渡)に出演いただいた。

2009

2009

8/15(土)8/17(月)

ゲスト : BLOF 他

城山コンサートのゲスト、ブロフ(オランダ)のピーター・スレイガーのブログより。 「これで一つのサイクルが完結した。四年前に佐渡を初めて訪れ、鼓童と『Aanzoek Zonder Ringen』を収録し、それからオランダで何度か共演した後、今、佐渡に来て鼓童と再びライブをした。今夜のように聴衆が手拍子を打ち、一緒に唄を歌ったことは、僕たちは何かを成し遂げたのだと思う。何なのか言葉で説明しにくいが、何かが伝わり、何か美しいものを作り出すことができたと思う。小さな国の小さな地方からきた小さなグループにしては悪くない。結構やるじゃないか。」

2010

2010

8/19(木)8/21(土)

ゲスト : ア・フィレッタ 他

ECの理想型として、佐渡での共演だけでなく、ゲストの地元を訪ねる相互交流がある。この年のゲスト、フランス・コルシカ島のコーラスグループ、ア・フィレッタとは、ECの1ヶ月後に彼らの主催する「フェスティバル・コルシカ」での共演が実現した。藤本容子のコメント、「ア・フィレッタと鼓童。20年以上にわたって、それぞれの島で音楽による異文化の交歓交流を生み出している。私達が体験した、このフェスティバルの自然でおおらかな空気、交歓力のありさまを、ECの未来へのお土産として持ち帰ろう。」

2011

2011

8/18(木)8/20(土)

ゲスト : ラアナーイー・ファミリー、弧の会 他

東日本大震災が日本を襲ったこの年。演出を担当した船橋裕一郎は、機関誌のEC特集にこのようなコメントを残していた。 「今年3月、私達は大自然から大きな試練を与えられました。しかし、それを体験したことで、一人ひとりの心の中の何かが変わったと思うのです。そのことを信じて、ECに向かいました。一人の力は弱いけれど、手を結んだら大きな力になれる、元気になれる。城山の会場に飾られた皆さんの手の結集(幕にお客様の手形を押してもらった)は、この夏のECに集まってくださった全ての方の気持ちの結集のように思えました。」

2012

2012

8/16(木)8/18(土)

ゲスト : 上妻宏光 他

ECに来島するお客様にもっと佐渡を深く知ってもらいたい。そんな思いで取り組んだ「佐渡体験交流フェスティバル」。「琴浦シーカヤック体験」「大佐渡・石名天然杉散策」「講座:宿根木と宮本常一」「町屋めぐり小木湊」「小木半島ジオサイト探訪」。3日間で100名を超える方々が参加され、ECメイン会場から一歩踏み出して、島の自然や歴史を様々な角度からお楽しみいただいた。また、フリンジ会場をみなと公園のハーバーマーケット内に移し、海を背にした特設ステージで昼間だけでなく、夜も様々なプログラムを提供し、城山から広がるECの可能性に取り組んだ。

2013

2013

8/22(木)8/24(土)

ゲスト : 上妻宏光、伊賀拓郎、愛音羽麗 他

城山コンサートでは、坂東玉三郎演出の「打男 DADAN」が映像スクリーン付きで華々しく初日を飾った。続く「創世」では、三味線プレイヤー・上妻宏光を迎え、〈鼓童+上妻〉のタッグが新しい日本の音楽を響かせた。最終日の「祝祭」では、特別ゲストに「アマテラス」でアメノウズメ役をつとめた愛音羽麗を迎え、鼓童とゲストが一体となったフィナーレをお届けした。また、鼓童メンバーの魅力に触れて、もっと気軽にたくさんの方々が楽しめるものをお届けしたい。そんな思いからトーク&ライブ「太鼓人生どんどこどん!(藤本吉利)」「千絵子におまかせ!(小島千絵子)」「うたのびっくり箱(藤本容子、宮﨑正美)」を企画した。

2014

2014

8/21(木)8/23(土)

ゲスト : BLUE TOKYO、DAZZLE、梶原徹也 他

日本各地で豪雨や災害のニュースが流れる中、天気の心配をしながら迎えたEC。舞台設営の作業中や期間中の深夜などには雨が激しく降ることもあったが、日中は3日間とも天気に恵まれた。ECは日常を離れて祝い寿ぐ祭りの場所であると同時に、鼓童にとっては通常の劇場公演とは異なる実験的な試みに挑む、冒険の場。城山コンサートでは、準メンバーから名誉団員まで総勢32名がオールキャストで出演するというプログラムをお届けした。また、ECと言えば音楽の祭典というイメージが強いが、DAZZULE、BLUE TOKYOというダンス・グループとの異色の共演に取り組んだ。

2015

2015

8/20(木)8/22(土)

ゲスト : レナード衛藤、スアール・アグン 他

城山コンサートに一つのピリオドを打ったこの年。ゲストには、ECのテーマ曲とも言える「彩(いろどり)」を産んだレナード衛藤(レオ)、3度目の出演となるイ・クトゥ・スウェントラ率いるスアール・アグン(バリ・インドネシア)をお迎えした。レオは城山コンサートの礎を作ったひとり。太鼓に向かう姿勢、舞台を創ることを、ともに生活し、毎日の緊張感みなぎる稽古を通して、メンバーに伝えてくれた。スアール・アグンの皆さんは、自然との調和をはかり、場を清め、祈る。彼らの振る舞いは、芸能がもつ役割が何であるかを示してくれた。

2016

2016

8/25(木)8/27(土)

ゲスト : 伝統音楽芸能団 バックハー(ベトナム) 他

城山コンサートを中心としたフェスティバルから、地域に根差した新たなコミュニティを目指したこの年、ECは原点の鼓童村コンサートで始まった。「たいこのこども(たいこの前では、みんなこども)」をテーマに、背景も文化も国籍も違うさまざまな人たちが交わりつながっていく新しいEC。小学生対象の連続ワークショップ「DAY CAMP〜佐渡を感じ、音を創る〜」をはじめ、「鬼太鼓体験&交流1泊2日ツアー」「佐渡の郷土料理と民俗芸能の旅」「佐渡の暮らし民家宿泊体験」など、佐渡を舞台にした体験プログラムの充実に取り組んだ。また、佐渡の中央に位置する佐和田の海岸で開かれた関連イベント「むっさんこ佐渡祭り」や、佐渡金山の遺構「北沢浮遊選鉱場」を舞台にした世界遺産を目指すイベントにも出演し、佐渡の方々との連携を深めた。

2017

2017

8/17(木)8/19(土)

ゲスト : BRAHMAN、梶原徹也、EIJI SUZUKI、Drums&Voices(ベトナム、ミャンマー、タイ、里アンナ)、高木正勝”山咲み” 他

30回目となるこの年、昨年の振り返りから、ECにはやはり熱量が集まる場が欲しいと感じ、小木みなと公園を会場に「ハーバーマーケットライブ」と銘打って、3日間のコンサートを開催した。初日は、ECでは初めてとなる本格的ロックバンドBRAHMAN(ブラフマン)とドラマーの梶原徹也を迎えての鼓童との共演。二日目は、アジア3カ国(タイ・ベトナム・ミャンマー)に奄美から里アンナ、音楽家・映像作家の髙木正勝率いる「山咲み」と鼓童。最終日は、鼓童オールスターズ(総勢36名)で「EC30周年お祝いライブ」を行った。

2018

2018

8/16(木)8/18(土)

ゲスト : PInO、TATSUO、長谷川達也(DAZZLE)、荒井信治(DAZZLE)、佐藤喬也(BLUE TOKYO)、松田陽樹(BLUE TOKYO)、石井侑佑(BLUE TOKYO)、マイケル・シャック(ベルギー/Roland)、元ちとせ、里アンナ、里歩寿、Dr.kyOn 他

昨年30回目、人間で言えばひと世代を経たEC。新しいステージに向かって、少し休んで、かがんで、ジャンプするようなイメージで、たくさんの方との会話を重ねた。そこから「&佐渡」「場となるEC」「新たなクリエイティブコミュニティへ」というキーワードが生まれ、「響く島。SADO」という旗印の元、佐渡で開催される様々な文化・芸術イベントを繋ぐ試みに取り組んだ。ハーバーマーケットライブでは、「鼓童Dance Night」「奄美ナイト」「鼓童オールスタースペシャルライブ」と、いろどり豊かに3日間を飾った。

2019

2019

8/15(木)8/17(土)

ゲスト : 金徳洙サムルノリ、YPY(日野浩志郎) 他

「佐渡で、地球はひとつになる」をテーマに掲げたこの年。開催日前夜に台風が佐渡の北西を通過したことから特設舞台の大屋根を上げることを見合わせ、初日の早朝に一瞬の風のおさまるタイミングを図り、なんとか設置することができた。その後、吹き返しに翻弄されたが、「鼓童若手連中2019」でハーバーマーケットライブの幕を開けることができた。二日目には3度目の登場となるキム・ドクス率いるサムルノリ(韓国)、多角的・実験的音楽家・日野浩志郎をゲストに迎えた。最終日の「鼓童オールスターライブ」は満員御礼となった。

2020

2020

8/20(木)8/22(土)

ゲスト : なし

コロナ・パンデミック。4月にオンライン開催を決定した時には、どのような形で ECを実施できるか、正直なところはっきりとしたビジョンはなかった。ただ、33回目となるこの祭りを続けたいとの一心だった。公演ツアーが行えなくなったメンバーが、佐渡から出られないことを逆手にとって、島内各地を訪れたり、自然の中で演奏する番組を自ら企画。撮影・編集もメンバー自身が行った様々な映像作品をラインナップして、3日間の番組配信を行った。 「佐渡から、ひとつの地球へ」をテーマに、お客様と実際の空間を共にすることは叶わなかったが、リアルタイムで世界各地から届く、コメントを眺めていて、一人一人が繋がりを求め、この祭りを作り出している姿に、ただただ感動するばかりだった。

2021

2021

8/20(金)8/21(土)

ゲスト : 三宅島芸能同志会、ヒダノ修一・一彩 他

当初、有観客でのイベントの開催に向けて準備を進めていたが、全国的な新型コロナウイルスの急激な感染拡大の状況をふまえ、インターネット配信のみの開催に変更して実施し、2年越しの企画「鼓童x三宅芸能同志会xヒダノ修一 〜見留知弘 鼓童在籍20年記念公演『軌跡』〜」、「鼓童オールスタースペシャルライブ」をお届けした。そして前年、様々なオンラインイベントに取り組んだ経験を活かして、ワークショップやマーケットなどのオンラインイベント、クラウドファンディングでの支援の呼びかけなどを行った。

2022

2022

8/18(木)8/20(土)

ゲスト : MIYAVI、上妻宏光 他

3年ぶりに有観客での開催ができた。小木みなと公園特設ステージの初日は、鼓童主演映画『戦慄せしめよ』の上映とトーク、2日目は昼、夜2公演に挑戦、最終日は、EC3度目の登場となる津軽三味線走者の上妻宏光、そして世界が注目するギタリストのMIYAVIを迎えての「祝祭」。町内を盛り上げる企画として、鼓童と一緒に演奏を楽しむ「小木町練り歩き」や、夜の「小木おけさ輪踊り」を復活させることができた。また、メンバーをより身近に感じていただけるよう、マリンプラザ小木の「Heartbeat Radio」特設ブースから公開生配信を行った。佐渡の自然と文化に親しむ企画として「シーカヤック体験」「ヨットの体験クルーズ」、宿根木公会堂での「人形芝居」を行った。

2023

2023

8/17(木)8/19(土)

ゲスト : 蓮沼執太、角銅真実、The Voices of South Africa 他

南アフリカのアカペラコーラスグループ「The Voices of South Africa」がハーバーライブ最終日を飾った。2019年に演出の池永遼太郎が南アフリカを訪ね、2020年にベルギーのブルージュでの共演を経てその年のECで計画された企画だったが、コロナ禍4年越しに、佐渡での鼓童との共演が実現した。その間、その夢が現実となることを誰よりも望んでいた、鼓童スタッフの赤嶺隆が病のため帰らぬ人となった。彼は最初のECから鼓童スタッフとして関わり、海外ツアーを開拓し、佐渡にゲストを迎え、鼓童と世界を繋ぐ「ひとつの地球」のまさに体現者であった。

2024

2024

8/15(木)8/17(土)

ゲスト : NAKIBEMBE EMBAIRE GROUP、林田ひろゆき、金子竜太郎、狩野泰一、坂本雅幸 他

小木みなと公園を中心とした海の近くのブルーエリア、木崎神社〜城山公園を中心とした木々に囲まれたグリーンエリア、小木商店街・三角公園・あゆす会館を中心としたイエローエリア。昨年から実施したこのエリア分けは、小木みなと公園がコンサートとハーバーマーケットの会場となり集中が進む中で、ECの聖地とも言える城山と小木町内の魅力を再創造する取り組みでもある。城山公園では特設キャンプサイトに加えて、「城山パークセッション」として3つのライブを行った。また、三角公園では佐渡の方々が企画運営するマーケットとフリンジのコラボレーションを深めた。あゆす会館を休憩所として開放するなど、真夏でも比較的涼しく過ごしやすかった佐渡だが、近年急激に暑さ対策が重要となっている。

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